甘くてジューシーなスイートコーンの旬といえば、夏。
夏になると、お祭りの屋台で美味しそうに焼かれていたり、和食屋さんのメニューにトウモロコシの天ぷらや炊き込みご飯が登場するなど、夏らしいビジュアルで私たちを楽しませてくれる食材の一つでもあります。
でも、実はトウモロコシの世界では、11月まで収穫や乾燥作業が続く品種があるのをご存知ですか?
私たちが食べるポップコーンの原料である「爆裂種(ばくれつしゅ)」は、収穫してすぐに食べられるスイートコーンとは違い、収穫後に乾燥期間を経てポップコーンが作られるため、秋の終わり頃まで出荷のための作業が続きます。
今回はそんな、日本のトウモロコシ栽培の現状と、ポップコーンの原料が「夏から秋」」にどのようにして準備されているのか、その舞台裏をのぞいてみましょう。
一般的にトウモロコシと聞いて多くの人が思い浮かべるのは、スイートコーン。
日本では6月から9月ごろに旬を迎え、夏が終わると店頭から姿を消していきます。そのため、「トウモロコシの季節=夏で終わり」というイメージを持つ方も多いかもしれません。
けれど実際には、トウモロコシの畑では秋、そして11月にかけて"最後の仕事"が続いています。
それが、ポップコーンの原料となる爆裂種の収穫と乾燥です。
表舞台には出にくいものの、日本の秋は、トウモロコシにとって大切な締めくくりの季節でもあるのです。
爆裂種の収穫は、夏の終わりから秋にかけてがピーク。日本ではおおよそ8月後半から10月頃に行われます。
スイートコーンがみずみずしさと甘さを重視して7〜8月に収穫されるのに対し、爆裂種は粒をしっかり完熟させ、乾いた状態で収穫するのが大きな特徴です。ちなみに、爆裂種の栽培は春から始まります。播種(種まき)の時期は、日本もアメリカもおおむね4〜5月。
アメリカでは4月末〜5月中下旬が目安とされ、5月下旬を過ぎると、収穫量や品質が安定しにくくなるだけでなく、政府の農業保険の条件にも影響するため、「遅れるくらいなら播かないほうがいい」と言われるほどシビアな判断が求められます。
一方、日本の主な産地である北海道は、アメリカのコーンベルト地帯と同じ緯度に位置しながらも気候がやや冷涼なため、播種は5月上旬ごろに行われるのが一般的です。こうして育った爆裂種は、葉や茎が緑色のうちに収穫されることはありません。畑で限界まで完熟させ、葉茎が褐色になり、全体がカラカラと乾いた状態になったところで収穫されます。
スイートコーンの収穫時期が7〜8月なのに対して、ポップコーンは9〜10月頃となり、およそ2ヶ月近く「旬」がずれていることになります。
爆裂種の収穫には「コンバイン」が使われ、広い畑を一気に刈り取りますが、その際に特に気を配られるのが、粒を包む固い皮「ペリカープ」を傷つけないこと。十分に乾燥していない状態で収穫すると、この皮に傷がつきやすくなり、きれいに弾けなくなってしまいます。
近年では、こうした繊細な管理を支えるために、技術の進歩も進んでいます。飛行機やドローンによる農薬・肥料散布、人工衛星を使った畑の生育状況の確認など、データを活用しながら最適な水やりや収穫時期を見極める農家さんも増えています。
畑でしっかり完熟させて収穫された爆裂種は、ここからさらに「乾燥」という重要なプロセスを経て、ようやくポップコーンになります。この乾燥作業にかかるのが、収穫後11月頃までとなります。日本の農家では、収穫後のトウモロコシを軒先に吊るしたり、風通しのよい場所でじっくりと乾燥させたりする伝統的な方法が今も使われています。この乾燥によって、粒の中の水分量が少しずつ整えられていきます。
実は、ポップコーンが弾ける仕組みはとても繊細。硬い皮の内側に、適度な水分が閉じ込められることで、加熱したときに高い圧力が生まれ、「ポン!」と一気に弾けるのです。
乾燥が足りなくても、やりすぎても、この現象は起こりません。
11月は、その"弾ける力"を完成させるための、重要なタームなのです。
夏に種をまき、秋に収穫し、冬を迎える頃にようやく完成するポップコーンの原料。
甘さを楽しむスイートコーンとは違う時間軸の中で、農家さん達は一年を通して品質と向き合っています。何気なく手に取るポップコーンの一粒一粒には、春から秋までの3つの季節をまたいだ、農家さん達のさまざまな技術、手間、工夫、愛情がぎゅっと詰まっています。
そんな風に、ポップコーン作りの背景に思いを馳せてみると、ポップコーンの味わいにも今までと違った深みが出てくるのではないでしょうか。食の裏舞台を知ることは食育にも繋がります。ぜひご家庭で、トウモロコシの最終ランナーである爆裂種のトリビアを楽しんでみてください。