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甘さの裏に隠された秘密について迫ります。


トウモロコシ大百科 世界のトウモロコシの品種とその役割

世の中には用途に合わせて進化を遂げた様々な品種のトウモロコシが存在します。本連載では、それらの特徴を深く解説していきます。
第一弾の「デントコーン」に続く第二弾は、私たちが野菜として愛してやまない「スイートコーン」です。

茹でても焼いても美味しい、夏の味覚の王様「スイートコーン」がなぜあんなに甘いのか、そして、なぜ乾燥させてもポップコーンにはなれないのか、その科学的な理由に迫ります。


私たちが「野菜」として食べる唯一のトウモロコシ

「スイートコーン(甘味種)」は、その名の通り糖度が高い品種です。第一弾で紹介したデントコーンが「穀物」として扱われるのに対し、スイートコーンは未熟な状態で収穫し、その瑞々しさを楽しむ「野菜」として扱われます。
歴史を遡ると、スイートコーンはトウモロコシの突然変異から生まれました。*1
本来、トウモロコシは成長とともに糖分をデンプンに変えて蓄えますが、スイートコーンは「糖分をデンプンに変える性質」が弱いため、粒の中にいつまでも甘い糖分が残るのです。*2


なぜあんなに甘いの?

スイートコーンが甘い理由

通常のトウモロコシは、葉の光合成で作られた甘い「糖」が、成長とともに硬い「デンプン」へと変わっていきます。
この作業を担うのが、粒の中にいる"酵素"たちです。酵素がせっせと働くため、通常のトウモロコシは成長するにつれて甘みが消え、硬いデンプン(角質胚乳)の塊になっていきます。*2

しかし、スイートコーンは、特定の遺伝子の突然変異によって、酵素が糖をデンプンに変える働きをサボってしまっている状態なのです。*3
そのため、材料である「甘い糖」がデンプンに変わることなく、そのままの状態で粒の中に長くとどまります。私たちがスイートコーンを食べて「甘い!」と感じるのは、この酵素がサボることで起きる奇跡的な「甘さのキープ」のおかげなのです。

近年の品種改良により、糖度が18度を超える「超甘味種(スーパースイート)」も登場しています。
これはメロンやブドウに匹敵する甘さです。しかし、この甘さは収穫した瞬間から急速に失われ、デンプンへと変わってしまいます。「トウモロコシは鍋を火にかけてから獲りに行け」と言われるほど、鮮度が命なのはこのためです。


スイートコーンは「ポップコーン」になれるのか?

ここで誰もが一度は考える疑問が浮かびます。「食べきれなかったスイートコーンを乾燥させれば、ポップコーンが作れるのではないか?」

しかし、ポップコーンLABで色々なコラムを読んだ方なら既にお分かりかと思いますが、残念ながら、答えは「不可能」です。

実際にスイートコーンを乾燥させると、第一弾で紹介したデントコーンや、ポップコーン専用の「爆裂種」とは全く違う姿になります。
粒の中の糖分がデンプンに変わりきれないため、乾燥すると中身がスカスカになり、粒全体が深く激しく「シワシワ」に萎縮してしまうのです。


決定的な違いは「皮」と「中身の密度」

スイートコーンが弾けない理由は、その品種の「特徴」にあります。

● 皮が薄すぎる:
私たちが食べた時に「皮が残らず柔らかい」と感じるスイートコーンの特性は、ポップコーンにとっては致命的な欠点です。皮が薄いため、内部の圧力が上がる前にすぐに破れて蒸気が漏れてしまいます。

● デンプンの密度が足りない:
ポップコーンが弾けるには、石のように硬い「角質胚乳」が隙間なく詰まっている必要がありますが、スイートコーンは中身が柔らかく、爆発に必要なエネルギーを蓄えることができません。

私たちが美味しく食べるための「柔らかい皮」と「ジューシーな中身」という特徴は、ポップコーンの条件とは真逆の進化なのです。


それぞれの「天職」を知る

瑞々しさと甘さを極めたスイートコーン。そして、カチカチの硬さと爆発力を極めたポップコーン。
同じトウモロコシという作物ながら、一方は「鮮度と甘さの野菜」として、もう一方は「保存性とエンターテインメントの種」として、全く別の道を歩んでいます。 スーパーでスイートコーンを手に取る時、その柔らかい粒が持つ「弾けない理由」に思いを馳せてみると、ポップコーンが持つ特殊な力強さがより一層際立って感じられるはずです。



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